第27緑化地区

フリーイラストレーター七片藍のブログ/第27緑化地区

コッペパンを投げる手

端島(軍艦島)育ちの小母さんが来ていて、
約束していた軍艦島の写真集を見させて頂きました。

この写真集そのものは普通に販売されているものですし、
買おうと思えば買えますが……私の目的は他にあります。
 
「この写真は建物が木に飲まれてるけど、やっぱり当時は緑も少なかったの?」
「そうだねぇ、なかったねぇ」

無人島になって数十年、様々な書籍の解説による情報は多かれど、
当時の事実を、その場で聞き取ることが出来るのは貴重なことです。

収録された写真は朽ちた姿ですが、島で過ごした人の記憶は朽ちる前。
住み慣れた家があり、まだ新しい家具もあったことでしょうから、
むしろ廃墟となった姿のほうが奇妙に映るそうです。

「共同浴場のお湯も海水だったって書いてある……上がり湯だけが真水か」
「そう、とにかく真水は貴重なの。
 こっち(現在)に来て、まずお風呂が狭いと思って銭湯に行ったねぇ」

怪我でもしようものなら、生傷に塩水はきついのではないかと云ったら、
小母さんは想像したのか、いっひっひと笑っていました。
炭鉱労働者はエレベータに乗って地上へ戻って来るわけですが、
坑内を出る男達には、ちょっと困った特徴があったそうです。

当時、パン好きの小母さんは父親の間食であるコッペパンを目当てに、
そのエレベーターの前でお姉さんと待っていました。

「だけど、みんな同じ顔してるんだもの」

ぞろぞろと降りて来る男達は顔が真っ黒で、誰が誰なのか分からないのです。
白目だけキロッと目立つほかは、目鼻立ちも見分けがつきにくい。

「だから適当に手を振ったの、父なら反応すると思って探したわけ」
「うん」
「そしたらね───」

男達は疲れを労っていると思ったらしく、「ほれ」とパンを投げてよこしたとか。

私の目的はこれです。
こういう話が聞きたかった。
きっと記録にも残らない「あの時」を語る言葉。

良い時間を過ごせました。
  1. 2011/08/24(水) 19:27:05|
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