第27緑化地区

フリーイラストレーター七片藍のブログ/第27緑化地区

謹んで

また長いこと記事が空きました。

この日は(就労時間の制限が近いこともあって)早めに副業を切り上げ、
帰宅する直前、マンションを買った例の現場仲間さんに声を掛けられました。
業者の補修が近づき、廻縁(まわりぶち)の塗装を急ぎたい様子。

「なるほど、壁紙を貼り換えるなら養生は要らなくなる」
「そう、今なら失敗してもダイジョブ───時給を払いますよ、どうですか?」
「んー……分かりました」

昼から用事もあって帰るつもりでいましたが、作業内容は私の修繕と同様。
そして時給の件は冗談半分だと思っていて、仮に本気で払われた場合、
知り合いから報酬は取りたくないので固辞するつもりでいました。

いったん帰宅し、脚立と刷毛を持ち出してマンションに向かい、
シーラー工程はダイニングが2回目、他室は1回目という状況。
そして塗装は廻縁だけでなく、柱や窓枠なども含むとのこと。

正直なところシーラーの必要性は半信半疑だったそうですが
白いはずのシーラーが木材から染み出たアクで変色したことにより、
いきなり白ペンキを塗っていたら……と、いよいよ気付くわけです。

そして他室の廻縁シーラーが2回目を終えたところで───

「……やっぱり、廻縁はオーク色がいいね?」
「え? いや僕もいいとは思うけど……本当に変える?」
「変えましょう! 買いに行けばいいね!」

───シーラー作業中、木材の色について話していたところ、
「廻縁や窓枠は濃い色で締めたほうが綺麗かも」という感想になったのです。

ダイニングは前住人が廻縁を白く塗装していたこともあり、
これで全室を統一するつもりでしたが……他室は和室になっています。
当然ながら襖(ふすま)もあって、襖の枠は暗めのウォールナット色に近い。

オーク色に変えるならオイルステンで染めるのが手っ取り早い一方、
既にシーラーを施したので、この上からは染まりにくくなります。
塗料の買い出しに付き合い、そこで吟味することになりました。

結果、屋内のオイルステン(油性)は保護ニスなしだと臭気がキツいので不採用。
かわりに襖の枠に合わせたウォールナット色の保護塗料としました。
ただし廻縁はシーラー済みなので、もうペンキで塗り込めるしかない。

戻って作業を再開し、シーラーのない部分にウォールナットを塗ったところ、
ここからは期待以上の色映えだったようで、すっかり気に入ったようでした。

「七片さん、これは格好いいよ! 凄い!」
「2回目になれば、もっと色が締まってグッと来ると思う」
「これは楽しくなって来た……苦手だったのに」

こうして、そろそろ帰らねばという時間になった頃、
「3時間くらいですね?」と、報酬を差し出されたのです。

「それは受け取れないよ、そもそも僕はプロじゃないから」
「いやいや、これは大事なことなんです」
「でも……」

その大きな理由は、この人の仕事(副業)にありました。
三ヶ国語に堪能なこともあり、外国人同士のトラブル解決などを引き受け、
弁護士を挟んでの通訳、契約書類の手続き代行等、範囲は多岐に渡ります。

その多くは、ごくごく短時間の"雇用"として代金を請求するのだとか。

「例えば会社を休んで市役所に行くね、でも必要なものを知らなくて持って来てない」
「ふむ」
「そしたら、また休みを取らなくちゃ。
 そういう時、たった30分だけでも『わかる人』が居ること、これが大事ね」

事実そうしたヘルプを「高い!」と蹴り、自己解決に走って役所へ出向き、
たびたび欠勤で収入減───結果ヘルプを頼まざるを得ない人が多いとか。

一度で済ませたい些細なことに、何度も対処して負担となる可能性。
この国に生きる外国人の苦労である一方、それは商機でもあるということ。
恐ろしいことに、私は「自分が日本人であること」を正しく理解していなかったわけです。

「受け取ってくれたら、また次も頼めるね」
「次も僕が時間を作れるか分からないよ?」
「その時は仕方ないね、今日は凄く楽しいから、もうちょっと居て欲しいけど!」

最大限に謹んで、拝むように受け取りました。
その後まだ電気が通っていないことが気になり、
アンペア変更は原則として年に一度しか出来ないと知っていたので───

「まだ引っ越してなくても電気は通した方がいいかも。
 塗装が昼間にしか出来ないし、暗いと業者さんも作業しづらい。
 補修と塗装が済むまで最低アンペアで契約するとか……できるといいけど」

「そうだねぇ、電力会社さんに聞いてみる」
「扇風機が使えれば乾燥も早いし、日光と照明では塗装の雰囲気も変わるから」

───脚立を担いで帰り、今度は母の用事に車を出しました。
帰宅してシャワーを浴びたのは、現場を出て8時間後のことです。

常々、私は自分と関わった人に損をして欲しくないと考えています。
「七片の助言で1割引きになった」みたいな、ちょっとしたことでいい。
今回は、そうした例で大喜びしてもらえた……ということでいいのかな。

手伝いに行けなくても、何か出来ることはあるはず。

  1. 2023/06/10(土) 22:23:14|
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