妹の買い物に付き合って100円ショップから出ると、
不意に見知らぬ老年男性が話を振って来ました。
私の白髪頭が「そう見えた」のかも知れません。
「あいつがさ、さっき、そこのをね」
「?」
声を掛けられるまで、私は店先に居たカラスを目で追っていたのですが、
彼は路面に落ちているゴミをつつくでもなく去ろうともせず、
周囲を気にしながら距離を測っているように見えます。
男性の話が見えずにいると、指さす方向に自転車の荷台。
ようやく分かりました。
「そこから取って道に置いて、つついてたんだよ」
自転車の荷台に載っていた買い物袋を漁り、
そこからハンバーガーを取り出し、路上でつついていたのです。
「えー?」
「そう、そこから」
男性は車で去ってしまいましたが、まだカラスは近づかない。
どうやら私との距離が近いため"獲物"から距離をとった様子。
そうこうしていると妹が買い物を終えて出て来ました。
「なに?」
「ちょっと待て、こいつが……」
「カラス? あっ! あーあーあー……」
私が3歩ほど下がったせいなのか、説明する間もなく、
カラスはハンバーガーを咥えて飛び去りました。
「おお、持ってっちまった」
「えぇぇ? あれで飛べるの?!」
数十秒後、次いで店から出て来た女性が件の自転車へと近づいて行きます。
この後「買ったはずなのに入ってない」となるのも気の毒なので、
余計な世話と知りつつ声を掛けることにしました。
「あの」
「はい?」
「カラスが、その買い物袋を漁ってハンバーガーを持って行きました」
「……」
「ついさっき、目の前で」
「えっ、あれっ……ないみたい……ですけど、えぇぇぇ? 本当だ、ない……」
「あっははは」
「えぇぇ~? あの、ありがとうございます~」
「いえ、僕らは何も」
妹が居たので怪しまれずに済みました。
礼を云われてしまいましたが、見ていただけとは云えない。
一羽で食べきれる量とは思えないけど、彼にとっては御馳走だったことでしょう。
- 2021/04/27(火) 23:48:28|
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