金木犀が満開です。
副業の現場にてフォークリフトを運転していたところ、
よその会社からやって来る老年トラックドライバーから───
「この現場では、リフトの扱いが一番いいね」
───と云われました。
フォークリフトを運転し始めて合計で10年にもなりませんが、
そんなことを云われるのは初めてです。
「褒めたって何もいいことないすよ」
「いや、もう一人のリフトマンは───」
私のような補助員が30人ほどいる早朝の現場にて、
その中でフォークリフトを運転するのは5人くらい。
中心的なのは2人で、その一人が私です。
「───ツメを入れてから、最初に持ち上げるんだよ」
「……僕はどうだったかなぁ、もう半分クセだから」
ツメ(爪)とはフォークのことで、これを荷物の下に挿入します。
そして足元から僅かに持ち上げて移動するわけですが、
ほかにもティルト(チルト)と呼ばれる機能があり、
現場では、よく「しゃくり」などと云います。
ティルトして荷物を傾け、慣性などで滑り落ちるのを防ぐのです。
フォークリフトは車体前部で荷物を扱うため、視界の大部分が遮られます。
また、狭い構内を移動するにあたって後進(バック走行)も多い。
よって重量物を持ち上げたまま急に動き出すこともあるわけで、
そうすると荷物には慣性が働き、さらに移動で進行方向とは逆向きの力が生じ、
荷物が前方向に倒れやすくなるため、あらかじめティルトで傾けるのです。
「あんたは、しゃくってから持ち上げるだろ?」
「え~と……そうかも」
「もう一人は、しゃくる前に持ち上げるんだよ」
「あ、もしかして」
「そう、こっち側に倒れる時がある、今週だけで2回あった」
「それは怖い、パレットとか割れてたりするし」
荷物を載せるパレットが破損している場合、積まれた荷物の重量に耐えられず、
持ち上げた瞬間にパレットが破壊され、荷物が前方向へ倒れたりします。
扱う荷物は人を押し潰すほどの重量物ではないものの……。
「事故ってほどにゃならんけど、ヘルメットをガツンとぶつけるんだわ」
「そっち側は狭いもんねぇ、特に下ろし始めは」
「もう一人にも云ったら『もう何十年もこうだから』って直してくれねぇのよ」
「クセだとね……僕も前の職場のクセがあるし」
「どんなん?」
「何も運んでない時は、完全にツメを引っ込めるの」
車種にもよりますが、フォークは前後に出し入れできます。
私は荷物を運んでいない時に必ずフォークを引っ込めるクセがあり、
これは旋回半径を縮小することで周囲(人や物)への接触を避けるためです。
ただし、数秒とはいえ引っ込めるにも時間を消費します。
「そのほうが安全だもんな」
「忙しいとモタモタしがちになるけど、どうしてもね」
あえて引っ込める必要がない時にもクセが出るため、
せっかちな人は見ていてイライラするかも知れません。
ティルトの件は私にとって常識の範囲でしたが、
改めて話題にすると、いかに危険な乗り物であるか分かります。
世の中って、触ると怪我をするものが多いです。
- 2020/10/15(木) 23:59:00|
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