先日にオークションで落札したものが届きました。
何かと云うと、テレカ(テレホンカード)です。
「スマートフォンが普及している今時?」と云われそうですが、
このテレカには思い入れがあり、少年時代に失われたものでした。
高校の教室で起きた小さな事件がきっかけです。
私の高校時代というと、今から20年以上も前の話になります。
携帯電話など普及していない、外出先からの連絡は専ら公衆電話の時代。
いつ頃だったかは忘れましたが、母が私にテレカを買ってくれました。
実際に使用したこともあり、印刷も好きで財布に忍ばせていたのです。
ところが高校での体育前、着替えを済ませた生徒が教室から出払った際、
施錠係だった生徒が鍵を掛け忘れ、その後に何者かが侵入します。
その結果に起こったのは、生徒の私物が盗まれるという事態。
何人かの被害者に私も含まれ、被害は少額の現金とテレホンカード。
パンチ穴が開くのを嫌って、いつからか使わないよう努めていたのに。
今にしてみれば自宅で保管すべきです。
そして、その残念な出来事には追い討ちがありました。
翌年の卒業式、生徒が一人ずつ級友の前で一言を述べて別れとする時、
施錠係の彼は「あれは俺のせいじゃありません!」と笑ったのです。
本当に彼のせいでなかったとしても、喪失感は増すのでした。
さらに携帯電話が普及し始めると、公衆電話の利用率は急激に低下します。
テレホンカードの需要も存在そのものから埋もれて行きました。
当然ながら同じものは製造されていないことでしょう。
そしてインターネットの普及が進み、ネット通販が珍しくもなくなる頃、
いつの間にか母がオークションを始めたりして、ちょっと驚きます。
そんな中、あの出来事を思い出すのでした。
「中古品の入手は近所のリサイクル店だけが頼り」の時代ではなくなった。
どこかの誰かが、あのテレホンカードと同じものを持っていたら、
そして手放しても良いと思っていたら───手に入るかも知れない。
願わくば、とんでもない価格にはなりませんように。
しかし手段を手に入れても、運ばかりは用意できません。
十年くらい前から折に触れて検索してみても、画像はおろか情報すらない。
ところが先日、Youtubeの自動再生で垂れ流される動画が再生された時、
80年代後期の世相を扱った内容に、再び記憶が呼び起こされます。
久しぶりに期待せず検索してみたところ、なんと見つかったのです。
信じられませんでした。
そして手にした本日、思わず「あぁ、やっと返って来た」と独り言。
あの時に失ったものと完全に同じものではありませんが、
私の中では、母への申し訳なさを回復させる唯一の手段でした。
まさか二十数年越しで叶うとは。
もちろん使わないし、使えなくなっても構わない。
まして持ち歩きはしませんとも。
友人に話したら笑うだろうな。
- 2019/09/29(日) 14:53:50|
- 日常
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