玉ねぎの苗を残り80本くらいまで植えてから自宅に向かうと、
その道すがら自転車の前で座り込んでいるお婆さんを見かけました。
小雨が降る中、チェーンの脱落を直そうとしていたので声を掛けます。
「大丈夫ですか?」
「外れちゃってねぇ」
「代わりますよ」
油で汚れたチェーンに触れていたせいで指先が黒い。
私は畑からの帰りで作業用グローブを持っているし、無茶もできます。
この年代の方々を見ると亡き父に重なって素通りできないのですが───
「どうもすみま……あっ」
「あ、掛かった。 そこでペダルを……」
───交代する直前にチェーンが掛かり、間もなく脱落は直りました。
お節介は必要なかったようです。
「あぁ、直ったわ! ありがとうございます」
「いえいえ、僕は何もしてませんし……」
すると傍を通った人が私の腕をチョイチョイと突付きました。
「?」
「どもっ」
「あぁ、久しぶり!」
私より一歳だけ若く、数十年前からの付き合いがある古い知り合いでした。
同じく工業高校を卒業しており、今は鉄道関係の修理工だと聞いています。
食い詰めのイラストレーターとは違って既婚で息子さんも居る立派な男です。
「どこかに行く途中だったの?」
「いやぁ、そこを曲がってる時に───」
車内から自転車の前で座り込む人の姿が見えたので近くのコンビニに駐車し、
駆けつけると今度は私が居て、問題は解決した後だったとのこと。
「じゃあ同じことを考えたわけか」
「そうそう、あれは俺の車です」
「僕も何もしてないよ、でも相当チェーンが緩んでる」
「あぁ、本当だ」
その後、チェーンを張るために自転車屋さんへ行くよう勧めると、
お婆さんは二人分の空振りに丁寧な礼を云って帰られました。
まぁ、めでたしめでたし。
- 2017/11/19(日) 23:59:00|
- 日常
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