第27緑化地区

フリーイラストレーター七片藍のブログ/第27緑化地区

縄張りの信用

プリンター等の台として使っていた小さなOAデスクを運び出しました。
これは私が自営業となる前に勤めていた会社から貰ったもので、
かれこれ20年近くも役立ってくれています。

私は過去二十数年で殆ど模様替えをしていないため、
しばらく見ることがなかった部屋の壁を見るのは奇妙な感じです。

家具が一つずつ転居先へ行くたび部屋の様子が変わるのは、
さながら私の生活が巻き戻される様を見るかのようです。
(この"巻き戻す"という表現も死語になりつつありますね)

そうして寝床に入った後、不意に気分が沈みました。
あろうことか、部屋の状況に不安を覚えたのです。

この部屋を出て行くのが妙に怖い……なんとしたことか。
20歳で独り暮らしを始めた前後でさえ、こんな気分にはなってない。

否、なぜ20歳の私は不安にならなかったのか。
真っ先に思いついたのは「独り暮らしへの漠然とした憧れ」でしたが、
すぐに違うと分かり、「根拠のない自信」のせいだと思いました。

生まれ育った実家に少なからず不自由さを感じる人は、
その対岸にある、あやふやな自由の姿を実家の外に夢想しがちです。

自分で自分の舵を取る、自分が中心となる生活。
実態は、あらゆる些細な作業が全て自分に集中する生活。
家族が代行していた、ちょっとした用事の担当者が自分一人になる。

20歳の私は、そんな現実を知らぬまま寝泊りを始めていたはず。
しかして日々の雑用に振り回され、それを消化することにも慣れ、
いつからか、この部屋が体の一部になっていたようです。

真っ暗でもドアノブの位置が分かる。
後ろ手が虚空を漂うことなく戸を閉める。
よろけて体を支える手が、いつも同じ壁をつく。

あるはずの何かが所在を失うかのような、この数ヶ月。
実際に家具が減って行く中、とうとう私の心が「異常」を検知して、
これが正しい舵取りであるかを問うている?

「おやおや、ひねこびた独身男にしては繊細ではございませんか。
 斯様に色気のない部屋が、ようやく若者を迎えられるかも知れないのに」

そんな声が、どこからか聞こえることにして片付けを進めるのでした。

  1. 2019/10/17(木) 00:00:00|
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